木材と日本人のつながり

日本らしい材といえば皆さんは何を思いつくでしょうか?
建物や家具などの身の周りのものを見ると、木材ではと考える方もいらっしゃるように思います。
たしかに様々な観点からみて木と日本人とのつながりは深いようです。
しかしながら今日、森林保全不足や林業従事者数減少など、森林面積の大きい日本ならではの課題があります。

こうした現状を踏まえて、日本人と木にはどのようなつながりがあるのかを見てみます。

 

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最初に少しだけ神話の話。
720年に書かれた日本書紀では、ヤマタノオロチを退治するスサノオノミコトが、自分の体の毛を抜いて木に変え、人々にその用途を伝えたという話があります。
たとえば髭はスギになり、胸毛はヒノキになるといった具合で、スギは舟を造るのに、ヒノキは宮殿を建てるのに使うよう伝えたと言われています。
実際に古代の遺跡からスギでできた舟が出土したり、伊勢神宮の木材にはヒノキが使われていたりなど、史実として確認できていることは大変興味深いです。その後、平安時代の寝殿造りや茶室建築の手法を取り入れた数寄屋造りなど日本の建築史においても、木材は不可欠なものであり続けてきました。

 

次に美術的な視点でみると、
日本では、彫刻に木材を使う割合が大変多く、90%を超えると言われています。石や金属、粘土など様々な材がある中で、年輪や木肌など独特の風合いを持つ木材に目を向け、古くから仏像彫刻などに利用されてきました。
中でもヒノキは、8世紀以降、多くの仏像製作に使用されました。ご存知の通り、世界最古の木造建築である法隆寺の構造を成す木材にもヒノキが使用されています。
ヒノキはその白木の美しさによって長い歴史の中で人々を魅了してきました。白木の美しさとは、塗料を塗らない、皮を削っただけの地肌の美しさのことを指します。そしてゆっくりと時が経つにつれて灰色にくすんでいく様子もまた、寂びた風合いとして愛されてきました。

 

ヒノキをはじめとして、長い歴史の中で大切に扱われてきた木々ですが、近代以降、人工林の増殖に起因して森林保全のための間伐が追いつかないなど様々な問題が生じてきました。
間伐とは、木々の密度が高い森において一部の木を伐採することにより適当な密度に保つことを言います。そうすることで、太陽の光が木々の間を通って地面に届くようにして、木々や地表の植物の生長を促すものです。逆を言えば、間伐をしないと木々や土壌はやせ細り、台風時の倒木被害や大雨時の土砂災害などにつながってしまうのです。

 

間伐作業を促進し森林保全の機運を高める目的で、間伐材を使用した生活用品がうまれています。
イスやテーブルといったインテリア用品はもちろん、間伐材から抽出された天然のアロマ用品まで、日々の暮らしに取り入れることのできるものが多くあります。
こうした動きは、ユーザーである私たちが森林界の問題に意識を向けることにも繋がっているように思います。

 

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私たちは普段、この国ならではの風土から様々な恵みを受けています。
木という存在もその1つです。

樹齢〇千年という神木や〇千年の歴史をもつ木造建築を一目見るだけでも、木々の偉大さや美しさに気づくことができます。

今回取り上げた間伐などの社会課題はやや難しいイメージがあるかもしれません。まずは身近なトピックから、木々などの自然材とのつながりについて考えてみたいところです。

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