日本人にとっての滝

じめじめと蒸し暑い梅雨の時期がやってきました。エアコンによる暑さ・湿度対策は欠かせませんが、森の中へ行って涼を求めるのも良いかもしれません。森へ行くとその美しい緑色に囲まれることで、心身ともに安らぐ効果があります。また、川のせせらぎや滝の水しぶきからも、自然の涼を感じ取れるでしょう。特に滝については、日本には実に数千の滝があると言われており、日本人は古来より滝に対して独特な感情を持ってきたとされています。これは、滝の美しさや雄大さだけでなく、その成り立ちからも影響を受けているようです。

 

国土地理院が定める滝の定義は以下のとおりです。
“流水が急激に落下する場所で落差が5メートル以上で、常時水が流れているもの”とされます。
日本の森・滝・渚全国協議会と呼ばれる自然環境に関する全国組織も存在しており、そこでは1990年に日本の滝100選が選定されました。
現代においては、自然の造形によって作られた風景や景色が優れている場所という意味での景勝地としての役割が大きいように思えます。
 
山岳地帯で見られる滝の多くは火山活動により生まれています。火山から流れ出た溶岩が冷え固まり、その周りにあった火山灰や砂岩など比較的やわらかい地層や岩だけが川の水流などによって削り取られ、浸食に強く硬い火成岩のみが風化されずに残ることで滝が生まれます。
 
日本では、古くから自然物を崇拝する精神が大切にされてきました。
その自然物には滝も当てはまっており、滝をご神体として崇拝する信仰心は現在でも見ることができます。先に述べたように、火山噴火などといった大規模な地球活動によって形成された滝は、古代の人々からすれば人智を超えたものとして畏敬の念を持つ対象になったのでしょう。
滝の水を浴びて自分の罪や穢れを清める禊(みそぎ)である滝行も、古来から日本人が持ち合わせてきた精神性に由来するものといえます。
 
滝に近づくにつれて聞こえてくる轟音や高さのある岸壁にくわえて、火成岩から成る岩盤の荒々しさが、人々が抱く滝への畏敬の念をより強めていきます。溶岩が冷え固まるときにできた板状の割れ目である板状節理や溶岩が冷えて収縮し柱のような形になる柱状節理といった特徴的な岩の形も、自然に発生した造形美であり、滝と相まることで迫力のある美しさを生み出します。
 
何千あるいは何万年前の地殻変動による痕跡が、この国の山岳やあらゆる自然の中に残されています。一度それらを目にすれば、そのスケールに圧倒されるとともに、人間という存在の儚さを改めて感じることとなります。
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風狂がかたちづくるもの

失われつつあるかつての日本の精神をヒントに、一見だれも気に留めないようなワンシーンを切り取り、既成概念にとらわれない自由なかたちで表現します。

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