一杯の茶に対する感謝の心

 

茶室でお茶をいただくとき、ふだん飲んでいる他の飲み物よりもありがたいものだと何となく感じてしまう。茶道の経験があれば、同じように感じる方がいるかもしれません。 そんな感覚は何処から生まれてくるのでしょうか。

 

5月ももう終わりを迎えますが、 5月から6月にかけては、さまざまな茶畑で新茶が摘まれます。 1年に1度だけのこのタイミングのために、茶葉農家の方々は、土壌や日照といった自然条件に上手く適合しながら、大切に茶葉を育ててきました。

 

実は、茶道の世界では、これらの茶葉をすぐには頂きません。 茶壷の中で茶葉を約半年間熟成させ、11月に茶壷の封を切り、はじめて新茶を頂くことができます。

 

茶そのものができあがるのにもこれだけの手間暇がかかっていますが、 茶をたてるのにも、これまた手間暇がかけられます。 亭主は、季節や迎える客などを考慮して、茶室にある掛軸や花、茶道具などのしつらえに心をつくします。 実際に茶をたてるときにも、湯の温度や量の加減に注意を払います。

 

そうして出された茶を、客は頭を下げて感謝していただきます。 その感謝は、目の前に座る亭主と茶葉の恵みをもたらす自然に対してはもちろん、 茶葉農家や流通業者など、一杯の茶が出来上がるまでに関わるすべての人への感謝でもあります。

 

 

一杯の茶に至るまでをこのように説明すれば、感謝して当たり前だろうと思うかもしれません。
 
しかし、よくよく見てみると、わたしたちの周りにあるものは、一杯の茶と同じように、自然の恵みや人々の丹精によってもたらされたものが多くあります。
わたしたちが今から頂く食事もその1つといえます。
手を合わせて感謝しいただきましょう。 

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失われつつあるかつての日本の精神をヒントに、一見だれも気に留めないようなワンシーンを切り取り、既成概念にとらわれない自由なかたちで表現します。

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