毎年11月頃になると、日本各地で鮮やかな紅葉の時期を迎えます。
寒い地域や標高の高い地域から徐々に色付きだし見頃を迎え、お花見と同じように、その時期を狙って各地の名所に国内外から人々が集まります。栃木・日光のいろは坂や長野・松本の上高地など、一度は耳にしたことがあるような景勝地があります。たとえば、いろは坂は絶好のドライブコースで、通常20分で通れる道路は、紅葉の時期になると2時間以上を要することもあるそうです。このように秋の風物詩である日本の紅葉に、日本人だけでなく、世界中の人々が魅了されるのはなぜなのでしょうか。
黄色やオレンジ色、赤色と、紅葉する様子を私たちは綺麗だねと口にし合ったり、写真におさめたりしていますが、何の木や植物が色を変えているのかを意識したことはあるでしょうか。
たとえば、ソメイヨシノといえば桜の品種ですが、実は秋の紅葉も黄色~オレンジ色に綺麗に染まります。また、紅葉といえば、もみじとカエデの葉を思いつく人が多いかもしれません。この2つの植物、何となく見た目も似ていて見分けが難しいですよね。実はよく見ると葉の形に違いがあり、切れ目が深いものがもみじです。ただ、どちらも植物学的にはカエデ属に分類されます。もみじの由来は「もみづ」という動詞で、昔は草木が色付く様子を指して「もみぢ」と呼んでいたようで、カエデ属のなかでも最も鮮やかに色付く種類をもみじと呼ぶようになったようです。
赤系統の色だけでなく、イチョウやカラマツといった黄色く変化する木々の葉も色彩豊かな景色をもたらしてくれます。
コロナ禍を抜け、近頃再び海外から観光客が紅葉の名所を訪ねている様子を見かけます。こうした光景をみたときに、海外では紅葉を見ることはできないの?と疑問に思いませんか。調べてみると、ヨーロッパや北米、その他の国々でも、都市や州によりますが、四季の変化の中で紅葉を楽しむことができます。では、なぜ紅葉の時期になると、日本を訪れるのか。そこには、大きく2つの理由があるような気がします。
1つ目が、植生の種類の多さです。紅葉する樹の種類は落葉広葉樹と呼ばれますが、日本の落葉広葉樹の種類は世界で最も多いのです。そのため、赤やオレンジ、黄色といった様々なバリエーションの紅葉によって、他の国にはない彩り豊かな景色が生まれています。
そして、2つ目。これはすべての地域には当てはまりませんが、寺社仏閣などの歴史的な建築物と紅葉の共演による景色は日本ならではのものです。日本庭園で散見される造園技法のひとつである借景もまた、紅葉により美しさが一段と増します。寺社仏閣の多い京都などへ、紅葉の頃に最も多くのインバウンド旅行客が集まることもうなずけます。
日本ならではの気候や植生、建築物が要因となり、他国では見ることのできない紅葉の景色がうまれていることがわかりました。
花見と同じく短期間限定の色彩豊かな紅葉の色づき。名所はやはり混み合いますので、近所の並木道を散歩しながらのちょっとした紅葉狩りでも十分楽しめそうです。